ブランディング
ブランディングしない。ブランディングとは何か?なんて考えない。
「ブランディングとは何でしょうね」そんなそもそもの質問を、経営者から投げられることがあります。ブランディング関連本を読む、勉強熱心でまじめな経営者ほど、難しく考えてしまうようです。
そういう経営者には、「ブランディングという考えを、忘れませんか」とお話しします。
ブランディングとは何だろう?どうすりゃいんだろう?なんて、しちめんどくさい観念的なことを考えるのは、もう金輪際やめてしまうのです。
さあ、シンプルにいきましょうよ。「ビジネスは商品第一だ!」「商品サービスづくりが、すべてだ!」そう信じてまっすぐに商品開発に取り組むのです。
「ブランディングを捨てる?奇をてらって、乱暴なことを言うのはやめろよ。無責任なヤツだ。」そんな経営者の声がいま、はっきりと聞こえました。
はい、ごめんなさい。もうちょっとていねいにご説明します。「ブランディングとは、商品開発だ」と、そのようにシンプルに考えて、ひたむきに楽しく商品サービスづくりに打ち込んだらいいじゃないですか、と提案したいのです。
ブランディングという概念だけ取り出して、なんなんだこいつは?と考えても、迷路に入り込むばかりです。
だからいっそ、ブランディングを商品サービス開発の一環として埋め込んでしまって、ブランディングなんて曖昧な概念は頭の中から追い出してしまった方がわかりやすいし、ビジネスにとってプラスだと思うのであります。
その前提として、こう考えていただきたい。物体として『完成された商品』も、仕組みとして『完成されたサービス』も、じつはまだ『未完成』なのだと。
料理と同じです。食材をきちんと選び、手間をかけ工夫した手料理。鍋の中で「物質的に完成したから」といって、そのままゲストに出す人はいない。
飢えている時代じゃあるまいし、コンロの上の鍋に飛びつく人はいない。まだ『未完成の料理』だからです。じゃあ、料理を完成させるためにどうしたらよいかというと、
●料理が最もおいしそうに見える器を選ぶ。盛り付けに気を配る。彩を添える。ゲストの前に見映えよく配膳する。
●食材について、調理の一手間について、ほどこした隠し味について、さりげなく説明する。座が和むような普段着の話をして、みんなをリラックスさせる。食べる人の期待感が高まる。気持ちがほぐれてくる。
当たり前といえば当たり前なのですが、ここまでやってようやく、『料理の完成』といえるのではないですか。というか、ここまでやって料理なのだと決めるのです。
これと同じで、物体や仕組みとして完成された商品とは、まだ『鍋の中の未完成な料理』。モノに飢えている時代じゃあるまいし、物体に飛びつく人はいない。
商品サービスのカタチや内実や機能やネーミングを、買って欲しい人に響くようにしっかりと練りあげて開発する。
いえ、ターゲティングをして買ってくれる人を絞り込む、という話ではなく、その人が買ってくれるときに、どんな気持ちでどんな期待感で購入を決断するのか、人物の属性というより、人物がどのような心模様になって購入へと至るのかを洞察することが大事だと思います。
その心模様になれるように、商品自体も商品を紹介するサイトや広告類の見映えも、商品の良さが最大限伝わるようにアイデアをしぼって開発する。ターゲティングというより、心模様と商品および紹介コンテンツや営業マンによる商品紹介トークのマッチングですね。
この商品はどんな心模様の人に向いていて、これを買うと私はどんな満足や喜びを得られるのか、私の暮らしはどう変わるのか。購入検討者が納得できるようなストーリーを、押しつけがましくなく開発し、ストーリーをプレゼンテーションするのです。
そこまで開発してようやく、商品開発なのだ。そこまでやらなきゃ、商品はまだ未完成なのだ、と決めるのです。
「ブランディングという新しい概念が加わった。どうしよう」と、ややこしく考えるより、「商品開発の範囲が、これまでよりも広がった。モノだけじゃなく、入り口から出口まできっちり考えてこそ商品開発」と定義し直した方が、どうですか、わかりやすくないですか。
これまでずっと、商品開発にはすごく力を注いできましたよね。でもじつは、なんと未完成の商品で自己満足して、市場に出してしまっていたのかもしれません。
手抜きの商品開発でしたね、なんていうと腹を立てる人もいるでしょうが、現代の消費者にとっては、そこまで含めて『商品』なのですから、仕方ありません。
買いたい人の心模様とマッチングする語り口で、よい商品を世の中に送り出す会社は、会社の顔つきも輪郭がはっきりしてよい印象になる可能性が高い。
買う人の心模様を読める会社は、働く人の心模様も読めるので、よい組織よい風土開発ができる可能性が高い。
よい印象の顔つきの会社になってよい風土が醸成されれば、働く人の気持ちも上がり、働きたいと手を上げてくれる人も増える可能性が高い。
商品開発を通じて、よい会社開発ができる。これぞ、ブランディングなんてややこしいこと考えたくない人にオススメの、「結果オーライブランディング」です。
ブランディングなんて使いなれない言葉に振り回されるより、商品開発の定義を広げて、前述したことを一つひとつしっかりと考える。そっちの方が結果、よいブランディングができると思うのですが。